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2007年3月22日 (木)

馬頭観音

 わたしはいま、遺跡から出土する動物遺体、つまり貝とか骨とかの鑑定、分析をする仕事をしています。その詳しい内容はさておくとして、仕事をするうえでどうしても必要とするのが、出土した骨がなんの骨なのかを鑑定するための、さまざまな動物の骨格標本です。とはいえ、生きている動物を殺して標本をつくるなどもってのほかで、また、家族としていっしょに暮してきたものたちの遺骨に手を出すことなどできようもありません。以前「できるだけがんばって飼育して、それでもいつか亡くなったときは骨は標本に」と思ってウサギを飼ったことがありますが、10年暮してついに亡くなったときには、情がうつりすぎていて、とても骨を標本にさせてもらう気にはなれませんでした。

 かくして、わが標本集めは、長い時間をかけて、たまたますでに死んでいる動物の遺体をみつけると、それを拾ってきてぽちぽちと骨をとらせていただいているわけで、こんなことではなかなか集まりませんが、それでも、ようやくいまやわが部屋もさまざまな骨で満杯になってきています。

 こんなことをしている関係上、以前から標本になってくれた動物たちの慰霊としてなにかしなければと思っていたのですが、これまでに多くの動物の死に出会い、さらに今回愛犬モモの死にあたり、ますますその気になってきました。

 そしてまず、動物たちのための仏様をまつりたいと考えるに至り、そうした役目をもったおかたはどなたかなと調べましたら、どうも馬頭観音のようです。馬頭観音が動物の守護や霊の導きをすると考えるのは日本独自のもののようですが、大切にしていた牛馬(とくにウマ)のためというところから始まり、いまやペットたちのためということで、多くのかたからの信仰を集めているようです。

 ただ、ひとこと文句をいえば、馬頭観音は「畜生界救済の菩薩」ということですが、ちょっとというか、おおいにひっかかるのがこの「畜生」ということばで、仏教界の用語としては確立しているものなのでしょうが、動物を「畜生」と呼ぶのは、いいかげんにやめてもらいたいところです。

 そして、この馬頭観音、像としては三面だったり四面だったり、いずれもおそろしくこわい顔をしております。これは、動物を虐待するような人間たちに向けた表情だと思うのですが、それが仏像表現としての定番になっているのでしょう。こうした像は寺院などのほかにも、石造仏としてまま見かけますし、単に石面に「馬頭観音」と刻んだだけの文字塔も、大小あちこちでみかけます。これまではながめるだけで通りすぎてきましたが、今後は写真などを撮りながら、どこにどんなものがあるかも注意してみたいと思います。

はるかな過去から現代まで、人と動物との関係をみていると、人の動物に対する優しい思いがあふれている事例にであうと、ほほえましくて人も動物も愛しく感じますが、なかには人の動物に対するひどいしうちが目につくものもあり、とくに昨今などはそっちのほうが目や耳にすることが多くなってしまいました。一頭、一頭の悲しい死などを知るにつけ、人間に対するわが顔つきも怒りの増したものになっていく気がします。馬頭観音の顔がおそろしいのもむべなるかな、といったところです。

 ともあれ、もう少しこの馬頭観音にこだわり、普段の生活や仕事を通して、自分もその役目の一端を少しでもこの世で担っていきたいものと思います。

3_2Photo_3  左の写真は、東京都府中市の郷土の森博物館の庭園に置かれていた江戸時代(嘉永3年-1950年造)の馬頭観音像で、以前は府中市内(府中町2丁目)にあったものをここに移したもののようです。風化していますが、3面で馬頭観音らしい形相をしています。ただ、ちょっと優しい表情かもしれません。

 

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 これは、神奈川県横浜市根岸にある「馬の博物館」の野外に安置してあったもの。これはなんともかわいらしい顔をしております。一番左のものは、嘉永7年(1954年)造とのことです。競馬には詳しくないのですが、かつて名馬といわれた競馬馬の遺影が飾られていました。

2_31_2   これは文字だけを刻んだもので、東京都日野市の日野警察署近くにあるものです。写真を撮っていたら、通りがかりのひとが、「ここは昔、厩があったんだ」といってましたが、かつては日野宿として栄えた地でもあり、ウマとの縁も強い土地柄だったのでしょう。写真右は昭和4年建立となっていましたが、左側のはもう少し古いものではないでしょうか。側面に氏名があり、ウマとの関わりがあった人のものでしょう。

 というわけで、今回はいささか地味な内容となりました。

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