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2008年5月18日 (日)

ニャアちゃん、大往生

その日は、なにげなくやってきた。

ニャアちゃんはじっと静かにしている時間が多くなったものの、食欲などには変化はなかった。うちでは、イヌのごはんは床、ネコのごはんは高いテーブルの上と決めていたが、その日の朝も、いつもどおりニャアちゃんはテーブルにひらりととびのり、ごはんを食べていた。わたしは、それをみて、こちらもいつもどおり仕事にでかけていった。

夕方、帰ってくると、幸四郎・モモ・チャミ、ちょっと遅れてトラが玄関まででてくるものの、ニャアちゃんの姿だけがなかった。居間までいくと、ニャアちゃんはそこでまるくなって寝ていた。熟睡しているようだった。

ネコが寝ていることは珍しくない。ニャアちゃんもそのうち起きてくるだろうと思った。

ところが、なかなか起きてこない。いままで、そんなことはなかった。帰宅したとき寝ていても、すぐに起きてそばにやってくるのが常だった。

「これは、おかしい」と思った瞬間、その頃日増しにおそれるようになっていたそのときがついにきたのだ、ということも、一瞬にして感じとってしまった。

「ニャアちゃん」と声をかけても、反応はない。寝息は少し乱れていたけど、苦しそうではなかった。ニャアちゃんは、まもなく逝く。それが確信となったが、そのことをわたしは不思議なほど冷静にうけとめていた。すぐに獣医さんに、とは思わなかった。このまま静かに逝かせてあげよう。それだけを思った。

わたしは、寝ているニャアちゃんのそばにすわり、ずっとようすをみつづけた。

夜の10時をすぎた頃だっただろうか。急にニャアちゃんが目をさまし、むっくりと起き上がると、わたしのほうにきて、膝のうえにのってきた。

膝のうえにいたのは、数分もなかったと思う。ニャアちゃんはまたもとの寝場所にもどると、再び寝はじめた。今度は、乱れもない、静かでおだやかな寝息だった。

わたしには、わかっていた。それまでのネコたちと同じだ。ニャアちゃんは、お別れを告げに起きてきたのだ。

その後、ニャアちゃんは眠りつづけた。そして、夜中の3時すぎ、ずっとニャアちゃんを見ていながらも、さすがにちょっとうとうととしてしまい、「はっ」と思ってニャアちゃんの鼻先に顔を近づけたとき、ニャアちゃんの呼吸がとまっていることに気づいた。

その日の朝は、ふつうにごはんも食べていたのに。病気になってたたかうこともなく、苦しみにもだえることもなく、そよ風がふっと吹くように、ニャアちゃんは逝ってしまった。

これでよかったのだろうか、と思った。

長年外で自由に生きていたものを、わたしが勝手につれてきて、家の中だけの生活を強いたのだ。そのことを、ニャアちゃんはどう思っていたのだろうか。

わたしにとっては、ニャアちゃんは愛すべきおばあさんネコで、われらの長老だった。

いっしょに暮らしてくれて、ありがとうと伝えたい。

このあと、チャミがいつものように、ニャアちゃんとくっついて寝ようとしてやってきた。そしてニャアちゃんに触れたとたん、チャミはとびあがってその場から逃げだした。チャミはニャアちゃんが死んだことを一瞬で悟るとともに、ショックもうけたのだろう。

こうして、ひとりと5頭の一角が、ついに崩れてしまった。

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