考古学関係
わたしの学生時代、江戸時代は考古学の範囲外にあった。それは攪乱などと呼ばれ、要するに後世に掘り荒らされた跡ということで調査・研究の俎上にのせられることがなかったのである。
しかし、現在では都内を中心に、江戸時代の遺跡も考古学の対象として調査・研究が進められている。近代に関してはまだ攪乱扱いされることが多いが、新橋駅などの調査から昨今注目されつつあり、太平洋戦争時の戦争遺跡に関しては、間の時代をとばして調査がすすめられている。
考古学とは、なにも古い時代ばかりを扱うわけではなく、極端にいえば、今朝の朝ごはんの残飯まで調査してもおかしくない学問である。
ただ、江戸遺跡の調査となると、遺構の規模が大きいこと、昨今は調査期間厳守という制約があることなどから、発掘調査がわれわれ古い時代をやってきたものにとって当たり前の移植ゴテによる発掘ではなく、大きなエンピ(円匙)での発掘が主流になっている。遺構から出土する遺物のとりあげかたにしても、遺構覆土(遺構内の土)の層位ごとのサンプリングではなく、層位を無視したサンプリング(遺構一括などと呼ぶ)であることが多いため、どうしても調査の粗さが目につく。
これでいいわけはなく、調査方法をなんとかしなくてはという声もあがっているが、この点については、まだこれからの課題である。
そうしたなかでも、調査によってわかってきたことをまとめた本が何冊も出版されている。
ほとんどが、江戸遺跡調査の草分け的な方々の業績であるが、そのうち何冊かを紹介したい。
これは東京都品川区立品川歴史館編集によるもので、萩藩毛利家屋敷跡、仙台藩伊達家品川下屋敷などの調査例を中心に、大名家における下屋敷の性格、これまでの発掘調査により確認されたこと、それらをもととする研究者たちのディスカッションにより構成されている。
江戸の大名屋敷の調査は盛んに行われ、情報は日増しに増しているが、大名屋敷そのものの数にも限度があり、緑地とされて残っていた区域の開発による調査例などが進み、すでに破壊されている部分もあることなどを考えると、そのうち調査するところがなくなるだろうともいわれている。
本書は下屋敷についてしぼったものだが、今後こうしたテーマを限定した研究書も後を追って出てくるのではなかろうか。
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| 甦る江戸 |
| 販売元 |
新人物往来社 |
| 定価(税込) |
¥ 2,243 |
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これは江戸遺跡研究会がまとめたもので、江戸遺跡の調査がつぎつぎと行われるようになった頃に出版された本。大名屋敷から、墓地、出土した植物、動物、陶磁器類、オランダ渡来のクレイパイプまで、当時確認された多くの情報が盛られている。江戸遺跡を勉強するにあたっての、教科書的一冊である。
著者の古泉氏は、江戸遺跡調査の第一人者のひとり。本書は江戸のなりたちからさまざまな生活具、いまや江戸遺跡といえば地下室(ちかむろ)・穴蔵という遺構は抜きにして考えられないところだが、こうした遺構や江戸の災害(火事)にも触れ、さらには武家屋敷の調査が多いなかでも庶民の生活についても書かれている。前書と重複するところも多いが、これも江戸遺跡に関する代表書であろう。
これは、江戸遺跡に関する考古学情報を一気にまとめたもの。いずれ新情報が加わって改定版が出るだろうが、高い本だけど、江戸遺跡の研究をするには、手元において置くべき本である。
昨今は江戸ブームであるそうだ。おかげで、江戸に関する本は日々出版されつづけている。とても全部読んでいられないし、いま手元にあるものだけでも、まだまだ沢山ある。
ああ、どうしよう。
というところで、(14)へつづく

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