2008年11月23日 (日)

『鎌倉の馬の骨』刊行

『鎌倉の馬の骨』が、やっと刊行となりました。

 鎌倉の馬の骨 漂着骨を調べる 鎌倉の馬の骨 漂着骨を調べる
販売元:セブンアンドワイ
セブンアンドワイで詳細を確認する

どうぶつ社刊で、代金が4500円(税別)と、自分でも驚く価格になってしまいましたが、カラー図版ページが多いので、どうしてもこれくらいになるそうです。

鎌倉の浜漂着のウマの骨を、がんばって歯の1点1点まで同定してありますので、興味あるかたは、よろしくお願いいたします。

一般の書店では、ジュンク堂や八重洲ブックセンターのような大型書店で扱ってくれているようです。

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2008年7月27日 (日)

『鎌倉の馬の骨』 出版決定

ここ数年がかりでまとめていた、鎌倉の漂着動物骨のうち、ウマの骨についての本が、「どうぶつ社」さんのご協力を得て、やっと出版にむけて動きだしました。

タイトルは『鎌倉の馬の骨 ――漂着動物骨を調べる――』となる予定で、採集したウマの骨を紹介し、ウシの骨と比較したウマの骨の特徴・見分け方を述べ、各地の遺跡から出土したウマの骨と計測値的比較をし、これらの骨の由来を探ろうとするものです。

目下、編集作業にはいったところで、順調にいけば、年内には刊行できる予定であります。

「こんな本だして、だれが買ってくれるんだろう」という不安はありますが、ともかく、ずっと抱えこんでいた企画のひとつが、やっとひとつ形になるということで、ちょっと肩の荷がおりた気がしております。とはいえ、まだまだ先があるので、これからもがんばらねばと思っておりますが。

実際に刊行される際には、また告知させていただきますが、興味のあるかた、ひとつよろしくお願いいたします。

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2007年9月26日 (水)

わたしの特別な書棚から-専門書紹介-(25)

跋扈する怨霊―祟りと鎮魂の日本史 (歴史文化ライブラリー 237) Book 跋扈する怨霊―祟りと鎮魂の日本史 (歴史文化ライブラリー 237)

著者:山田 雄司
販売元:吉川弘文館
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ずいぶん前に、正確な書名は忘れてしまったが、民俗学者か言語学者が聞き取り調査をまとめた「アイヌ伝承」に関する本を読んだことがある。そのなかに、かつて、いまのように医学が発達していなかった頃、当時のひとにとって謎の死(なんらかの病気だったのだろうが)を集落のひとびとが異常な死ととらえ、集落全体が呪われたものと考えた結果、その集落を廃して別の地にそっくり移転してしまったという話があった。これを読んだとき、考えたものだ。

発掘調査で確認される縄文時代の集落跡でも、その後も同じ地で弥生、古墳時代、古代と集落が営まれたとしても(これを複合遺跡という)、ずっと代々その土地を受け継いできたわけではないだろう。たいがい、どこかで断絶がある。なぜ、そうしたことがおこるのか。それが、ほんの一時期だけの集落跡ならば、なぜ一時期だけなのだろうか。そこに住んでいたひとびとは、どうしてその集落を捨てることになったのだろうか。自然災害でもあったのなら、その痕跡は確認できるだろう。それもないとしたら、なぜ。

こうした場合、考古学者は、気候変動がそれまでの生活を維持できなくさせたためとか、異文化の進出によってそれまでの住人が追いやられたとか、そんな理由を説く。

しかし、前述のように、その土地が「呪われた」と考えての移転ならば、そうした概念の進入を認めない考古学者、歴史学者には、解答を出せないことになる。

以前にも書いたと思うが、とくに中世以前においては、ひとびとの暮らしには、霊だ、怨霊だ、神だ、といったものが、日常生活についてまわっていただろう。現在だって、だれがどんだけ否定しても、そうしたものはひとの心に残りつづけている。実際にそうしたものが存在するかどうかではなく、ひとがそうしたものを信じていたことが重要なのだ。その心性を理解することが大事なのだ。

本書の著者はもともと「心霊写真が好きで」などと「あとがき」で学者としては勇気ある告白をされているが、のちにこうした精神世界に属することを研究テーマにすると、指導教授に「学問は正道をいけ」と諭されたそうである。しかし、歴史におけるひとびとの暮らし、社会を探るには、こうしたことの研究は、大正道ではないだろうか。

本書は古代、中世の名のある人物の怨霊伝説について、さまざまな文献を通して追求している。そして、それが古代、中世社会を構成する、重大要因であったことも説かれている。

こうした研究は、もっと正道のものとして取り組まれねばならないと思うし、本書では歴史的人物を扱っているが、民衆の生活においては、もっとさまざまな話があるだろう。それをどう探っていくかはなかなか難しい問題だが、こうしたことをはなから除外していては、本書にもあるように、血の通ったひとの歴史は見えてこないだろう。

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2007年9月22日 (土)

わたしの特別な書棚から-専門書紹介-(24)

理系の視点からみた「考古学」の論争点 Book 理系の視点からみた「考古学」の論争点

著者:新井 宏
販売元:大和書房
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思わず買って、すぐに読んでしまった。

著者も本分で書かれておられるように、考古学とは人間の生活全般を相手にするものだけに、さまざまな分野からの参入が可能―いや、必要な学問である。各種遺物や遺構の分析が年々細かくなり、考古学者ひとりひとりが専門領域だけでていっぱいになってきている反面、それを綜合し、専門領域を超えた広い視点をもたねば考古学上の課題は解けないとする批判もあり、昨今はさかんに学際的研究が求められている。ただ、その呼び声は大きくても、なかなか実現に至らないのが現状ではなかろうか。わたしの動物遺体分野でも、ともすれば「予算がない」とか、「興味がない」とかで、考古学調査から疎外されることが多いのだ。

まして、他分野からの参入には、結構学会は冷たい。「素人がなにをいうか」と思っているか、専門外のことはわからないからと、あえて沈黙を守っているかなのだろう。

本書の著者は、金属関係の専門家とのことで、文系の考古学者にはとてもついていけないような専門的分析をもって、現在論争になっている考古学上の課題に挑戦しておられる。

「三角縁神獣鏡問題」、「弥生年代遡上問題」、「古代尺問題」、「金属考古学の諸問題」

これが本書にとりあげられているテーマだが、かねてより製鉄が行われなかったとされているの弥生遺跡からちょくちょく鉄滓が出土し、よく検討もされずに「弥生の遺跡から鉄滓が出るはずがない」、「なにかのまちがい」、「後世の攪乱による混入」と簡単にすまされていたことに、「それでいいのか」と考えていたわたしとしては、「弥生時代には本当に製鉄が行われていなかったか」の項目は、とくに興味深いものだった。そして、もっと専門的分析が必要だということも。

昨今の考古学者は、業績をあげるためか、理系からの都合のいい提示には、よく調べもせずにとびつく傾向があるのではないか。そして出した結論に都合のわるい反論がでると、無視する傾向が強い。

かつて古人骨の専門家が、「考古学者は人骨が出ると自分らにまかせっぱなしにするが、それも考古資料である以上、少しは自分たちでも勉強しろ」と苦言を呈されていたが、まさにその通りだろう。

ひとつの遺跡を解釈しようとするなら、その考古学者は、すべての遺物、遺構、諸科学分析を綜合してかかる必要がある。諸科学だけ別物として切り離していいわけはなく、その点、発掘報告書でも自然科学分析などはよく「付編」などとして本文のふろくのような扱いをしているが、それは姿勢として間違ったものである。このことは、ずっといいつづけているが、誰もきいてくれない。

そういえば、縄文時代の漁労について考えていたとき、ほんものの漁師さんの視点だと、どういうことになるのだろう、机上論でものいう学者とは、まったく違う意見がでるのではないか。漁師の考古学者がいたら、画期的な研究ができるのだろうな、などと思っていたこともある。

専門外・アマチュア研究者の言に冷たいのは考古学ばかりではないのだろうが、専門の世界にいると頭がかたくなってしまうのだろう。だから、画期的な発見などというものが、往々にしてアマチュアの手によることが多かったりするのだ。

もっといろんなひとが参入して、学問を自由にしなければならないと思うのだが。

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2007年9月11日 (火)

わたしの特別な書棚から-専門書紹介-(23)

動物問題関係

わたしが住むマンションは、ペット可ということになっていた。いや、いまも一応「可」なのだ。しかし、最近、エレベーターにイヌの尿があって誰も掃除に来ないということから、理事会で問題になり、ペット飼育をを禁止しようとする動きに発展した。

このマンションはもともとはペット禁止で(ただし、管理規約には記載されていない)、それでもペットを飼育するひとがいて、不況になって以来は、もうペット可にしないと新たな買い手もつかないだろうということでペット容認に転じたらしい。わたしが引っ越してきたときには、多頭飼いするお宅もあり、イヌが飼い主に抱かれることもなく、通路を堂々と往来していた。

「いくらペット可でも、マナーは守らなくては」と思っていたが、やはり問題になってしまった。

現在、理事会も事態を静観中といったところで、飼育種を登録するということにしただけで落ち着いているが、それは見かけだけでのことで、このこと以来、ペットを飼育しているひとたちが気をつかうというより、こそこそするようになり、ときどき声は聞こえても、ペットたちの姿を見ることはなくなってしまった(たまに毛布を抱えているひととすれ違うが、その毛布のなかに、イヌの耳が見えたりはした)。これでは、事態は改善されたとはいえない。ペットも飼い主も幸せとはいえないし、ペット飼育を快く思っていないかたにとっても、苦々しさを増すだけかもしれない。

近所では、まだまだイヌの排泄物があちこちに放置されている状態。リードなしの散歩も多くみかける。いろんなひとが、いろんな場で口をすっぱくしていっても、こういう状態なのだ。

このマンションでも、「いずれ、もっと積極的になんとかしなくてはならないときがくる」と思い、ここのところ、本棚にしまっていた集合住宅でのペット飼育の本を読み返していた。

そうした本を、ここでも紹介しておきたいと考える。

Book マンションで犬と暮らす―シティドッグ・マリーの物語

著者:小宮 清
販売元:草思社
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これは、著者が集合住宅で愛犬マリーと愛猫キクゾーを飼った日々の記録。集合住宅に限らず、イヌやネコを飼う心得・情報を読みやすい形で提供してくれている。

マンションで犬と暮らす幸福
Book
マンションで犬と暮らす幸福
著者   根本 寛
販売元   WAVE出版
定価(税込)   ¥ 1,575

ペット禁止の管理規約のなかったマンションで、ペット飼育禁止を強要してくる理事会と愛犬との暮らしをかけて裁判で闘った方の記録(横浜ペット裁判として有名になったようだ)。集合住宅でもペットと暮らすことができるということの大切さ、その場合の心構え・注意点、著者自身の喜びなどもつづられている。

集合住宅でペットと暮らしたい―ペットライフ、新時代 Book 集合住宅でペットと暮らしたい―ペットライフ、新時代

著者:井本 史夫
販売元:集英社
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前半は、集合住宅だろうが一戸建だろうが、イヌやネコを飼うにあたっての基本が述べられている。常識的なことが多いが、この常識が守られていないことが、ペット問題の基礎になっているのでは。他人のことを考えない飼育は、どこに住んでいようと関係なく問題を起こしてしまうわけで、まずここがきっちり理解されていないと、集合住宅ではペット禁止という前時代的な常識も打ち破れないであろう。後半は、実際に集合住宅でペット飼育を可にしていくためのノウハウが記述されている。本の構成からしても、前半が重要である点を強調しておきたい。

マンションで犬や猫と上手に暮らす Book マンションで犬や猫と上手に暮らす

著者:金巻 とも子
販売元:新日本出版社
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これは、上記の本の著者の見解を参考にしているものだが、著者が建築士なので、建築士として最近のペット共生マンションのおかしな点、どういう室内構成がペット飼育にいいかといった、著者ならではの指摘・視点が参考になる。

ついでながら、近所に何棟もある大きな団地がある。最近たまたまその敷地中央をよぎる道を通ったとき、これまた大きな看板が目についた。イヌとネコの絵が描いてあって、その横に

「めいわくなので、わたしちは飼えません」

と記されていた。この書き方だと、イヌやネコの存在そのものが迷惑なもののようだ。もしかしたら、この看板を書いたひとは、そういう考えなのかもしれない。これに対して、いいたいことはいっぱい頭をよぎったが、この団地がそういう決まりでなりたっているのなら、「それはそれでどうぞ」といったところだろう。和を尊ぶ仏の心でみることにしよう。

でも、やっぱり、なにがどうでも、この表現は間違っている。

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2007年8月23日 (木)

わたしの特別な書棚から-専門書紹介-(22)

『縄文の動物考古学』について

縄文の動物考古学―西日本の低湿地遺跡からみえてきた生活像 Book 縄文の動物考古学―西日本の低湿地遺跡からみえてきた生活像

著者:内山 純蔵
販売元:昭和堂
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考古資料のうち、土器や石器だけではなく、動物遺体をはじめとする自然遺物の分析・調査も重要であり、そうした面からの研究も進めていこうとするニューアーケオロジーという概念が提唱されたのは、1970年代のことだった。

ところが、いまだに発掘調査段階で動物遺体資料は捨てられたり(とくに江戸遺跡)、目だった大きなものしかサンプリングしないとか、といった事態は普通に行われており、予算がないからと、分析対象にすることもおそろしく少ない。こんなことは、土器や石器ではありえなかいことである。

こうしたことが続いているのは、動物遺体を専門とする人間(つまり、わたしのような)が、その重要性をちゃんと説いてこなかったからである、といわれたこともある。そこで、なんとかしなくては、と思いつつあるところ、『縄文の動物考古学』と、ストレートなタイトルの本が出た。これは、久しぶりに刊行された「動物考古学」の概説書に違いない。そう思って、喜んでさっそく購入し、読んでみた。

結果、期待とは違っていた。この本は、福井県鳥浜貝塚と滋賀県の2遺跡から出土した縄文期の動物遺体資料を使った、長大な研究論文といったもので、一般向けの概説書とはいえないものであった。著者も、とくに動物遺体の専門家でもないのかな。

論文の内容に関しては、順序だてて細かくさまざまな分析を行っているようで、きめ細かさを感じるが、結論として、シカ猟・イノシシ猟を○月、○○月と、現在の12月で記述しているところが気になる。

動物というものは、1月だから、2月だから、といった形で生活しているわけではなく、気候など環境条件によって生態状況も変化するものであろう。となると、狩猟時期を推定するには、まず縄文期(それも、前期や後期ではまったく違う。縄文海進、海退というのがあって、前期などは気候温暖期にあって、関東でいえば、東京湾などは、湾奥は現在の埼玉県にまで達していた)の気候、それによる地域的植物相・動物相なども考慮にいれ、その環境下では、研究対象とする動物がどういう生態を示すのかを調べなければならないだろう。

現代でも、暖冬、猛暑、温暖化などで、動物が通常とは異なる動きをみせて、ニュースのネタになったりしている。環境条件というものは、決して無視できるものではないのだ。本書は、そこのところの詰めが甘いようだ。せっかく細かく検討しているのだから、こうした面も大事にしてほしかった。

とはいえ、わたしもかつて、気候温暖化期にあった縄文早期の、スズキ(某貝塚出土の主体魚種)の漁労時期を推定しようとして、まず現在の気候条件でわかっているスズキの年間行動を、縄文早期の推定年平均気温にあわせて修正しようとしたら、一年中漁労可能ということになり、漁期の推定などできなかったことがある。また、こうしたことも、結局は机上論で、実際気温・海水温が高いときの動物の行動など、実際にそういう条件化での観察がなされないかぎり、なにが正しいのかわかりゃしないであろう。

よって、せっかくの本書も、結論的には、参考でとまってしまうかも。それでも、こうした研究方法を提示していただけたということで、考古資料としての動物遺体分析の重要性も、世に伝えられたのではないか、とも思う。本書の意義は、「あとがき」に書かれている。わたしの抱いているいらだちも、著者の思考と相通じるものだろう。考古学という世界には、もっと、こういう研究者が必要なのだと考える。

ただ、統計学的用語・方法などは、説明もないため、一般にはよくわからないだろう。一般書籍として刊行する以上、そうした面での配慮も欲しいところではある。

刺激をいただいた。いつか、自分もちゃんと一書を書かねばと思うしだいである。

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2007年8月15日 (水)

わたしの特別な書棚から-専門書紹介-(21)

考古学関係

縄文時代の考古学 6 (6) Book 縄文時代の考古学 6 (6)

販売元:同成社
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シリーズの2回目配本が、やっと出た。

先に『ものづくり』というサブタイトルであることを知り、これまでの同類の本で、「縄文時代」、「ものづくり」とくれば、たいがい縄文土器製作とその施文方法についての話ときまっていたので、今度もまたそうだろうと勝手に決め込んでいた。そして、その場合の他書もいくつか考えていたのだが、本書を開いてみて、まったく違ったことに驚くとともに、ちょっと嬉しかった。

本書は、縄文土器については、ほとんど記載されていない。まあ、土器については他の巻でやるのだろうが(刊行予定をみると、第7巻かな)、この『ものづくり』で取り上げられているのは、石器を主体とし、これまであまりまとまった記載のされていない骨角貝製品を対象としている。

日本の考古学は有名な大森貝塚の発掘を主導した自然科学者の活動から始まり、縄文人骨収集の狂奔時代があり、その後縄文時代に関しては、土器の施文方法やら時代変遷を追う作業(編年という)を中心にして研究が進められてきた。

わたしの学生時代などは何々式の特徴はどうでこうで、というややこしいことをしきりに勉強させられたものだ。しかし、それがさらに細かくなるにつれて、土器は出土遺跡ごとに細分されるような展開になり、よく「このままじゃ、1遺跡、1型式になるぞ」などともいわれたものだ。

それが昨今、こうした編年中心、そればかりやってる感のある考古学のありかたに疑問をもつものも多くなり、そんな既存の考古学に嫌気がさし、これまでの考古学とは別の新考古学を樹立しようとする動きまで出始めたようだ。

土器は、過去の社会や生活、ひいては人間そのものを考察するためのひとつの要素である。わたしが専門としている動物遺体などもその要素のひとつなのだが、考古学の世界では、ともすればわたしの分野など、「考古学じゃない」といわれることも多い。そういう状態に長年むかむかしつつ、黙っていれば捨てられてしまいかねないイワシの骨やらアジの鱗をも資料としてふんばってきた。考古学は、土器だけでおわっていいものではないのだ。

ここ数年、石器の研究者が地道ながら目覚しく研究を進めているなとは思っていた。木製品や骨角貝製品についても、あまり目立たないながら、着実に成果をあげてきたのだろう。それが、やっと土器中心ならぬ本書という形になったのだろう。本書に記載されていることについては、これからじっくり読ませてもらおうと考えているが、なにはともあれ、考古学がまた面白くなってくるかもしれない。

ただ、考古学の専門用語の面倒くささは、もっとなんとかならないものかと思う。博物館に展示されている遺物の名称記述で、日本語では漢字だらけのわかったようなわからないようなものなのに、英語表記ではまことに簡略だったりする。こうしたことが、一般のひとがとっつきづらい要因になっているのでは。まあ、自分は学者が偉そうな顔しているのが気に入らない性質なもので、こうしたことは、また機会があれば、ひとりぶつくさいってやろうと思っていますが。

というわけで、今回はこの本一冊だけの紹介です。

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2007年8月14日 (火)

Bluemarinさんへ

Bluemarinさんへ

コメント、ありがとうございました。感動でした。

かつてイヌの本についてやりとりしたこと、覚えております。

愛犬さんは19歳ですか、ひとえに大事にされている家族の愛情でしょうね。うらやましいです。

また、よろしくお願いします。

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2007年8月12日 (日)

わたしの特別な書棚から-専門書紹介-(20)

動物学関係

イヌ

人間とイヌとの関わりについて書かれた本を何冊か紹介したいと思う。

人イヌにあう Book 人イヌにあう

著者:コンラート・ローレンツ
販売元:至誠堂
Amazon.co.jpで詳細を確認する

これは、基本中の基本となる本。のはずで、ずいぶん前に買って読んだと思うのだが、書棚のイヌ本のかたまりの中に見当たらない。書庫となっている物置(いまや中に入るのも一苦労)にあるのかもしれないが、内容を確認できなかった。でも、基本の本であることに変わりはない。

イヌ―どのようにして人間の友になったか
著者    J.C. マクローリン
販売元   岩波書店
定価(税込)   ¥ 968

これはイヌの進化から書きおこし、オオカミとイヌとの相違点(骨格を含む)や、最初に家畜化されたイヌをどう追求するかといった問題についての所見を述べている。専門的な面では、やや強引なところもあるようだが、一説として聞いておく必要はあるかも。

犬の日本史―人間とともに歩んだ一万年の物語
Book
犬の日本史―人間とともに歩んだ一万年の物語
著者 谷口 研語
販売元 PHP研究所
定価(税込)   ¥ 693

著者の専門は、日本中世史のようだ。縄文時代のイヌのことから書かれているが、記紀神話などの文献に書かれた事項や中世におけるイヌと人との関わり、江戸時代でのこと、さらには「犬の霊力・呪力・超能力」といったことにまで触れられていて、楽しい本である。

犬から探る古代日本人の謎―ヒトとともに生きてきたイヌの遺伝子が日本人のルーツを語る
著者      田名部 雄一
販売元   PHP研究所
定価(税込)   ¥ 714

これは、イヌの血液から遺伝子を抽出し、その組成分析から現在の日本のイヌが世界のどの地域にいるイヌに近いかを割り出し、日本犬の起源を探るとともに、そのイヌとともに生活していたはずの原日本人のルーツをも追及しようとするもの。画期的な研究内容であるが、その結論が学問的に認められるかどうかは、まだ他の面からの検証が必要であるといったところのようだ。

イヌの力―愛犬の能力を見直す (平凡社新書) Book イヌの力―愛犬の能力を見直す (平凡社新書)

著者:今泉 忠明
販売元:平凡社
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これは、単にイヌの能力について書かれた本ではなく、化石人類とイヌとの出会いから、イヌの祖先はオオカミなのかという疑問への検証、日本人とイヌとの関わりなど、歴史的な面に多くのページを割いている。

日本人とイヌとの最初の出会いというものは、まだはっきりとはわからない。縄文時代の遺跡から、イヌの埋葬遺体が出土していることから、この頃にはもう人とイヌとの関係は密接なものになっていただろうと推定されるのみだ。イヌ自体の起源に関しても諸説あり、有力説はあっても、確定的ではないようだ。こんなにも親しいイヌという動物について、われわれが知っていることは、まだまだ少ないようである。

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2007年7月30日 (月)

わたしの特別な書棚から-専門書紹介-(19)

動物学関係

犬学

学術分野で、「犬学」というのが確立しているのかどうか、よくわからない。でも、遺跡から出土するイヌのことを調べるにも、現在生きているイヌたちのことを知るにも、この手の本はしょっちゅぅ見るため、もう自分の本はぼろぼろになってしまった。そんななかから、主なものを紹介したい。

イラストでみる犬学 Book イラストでみる犬学

著者:林 良博
販売元:講談社
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きれいなカラーイラストで、イヌの起源・進化・分類・遺伝、体の構造と機能、行動学、健康・病気、その他動物に関する法律など、さまざまなことが詳しく記載されているありがたい本。常にそばに置いておきたいもの。

イヌ―このふしぎな動物 (1983年)
著者 今泉 吉典
販売元 教育社

これは絵本的に書かれている部分もあり、こどもにも読めるように記述されている。「こどもでも」といってもバカにするなかれ。内容はかなり専門的部分にまで踏み込んでいる。もう古い本になってしまったので、もうなかなか書店には置いてないだろう。

図説犬学大辞典―犬の形態と用語解説
著者 ハロルド R.スパイラー,メアリー・デビッドソン,ペギー・デビッドソン,大野 淳一
販売元   誠文堂新光社
定価(税込)    ¥ 4,410

A to Z で、イヌのすべてを項目ごとに解説してくれている。専門的だが参考にさせてもらうことが多く、わたしの本はもうぼろぼろになってしまった。

イヌの動物学 Book イヌの動物学

著者:猪熊 寿
販売元:東京大学出版会
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これは比較的最近出たアニマル・サイエンス・シリーズの一冊で、手ごろなサイズでイヌの社会・行動・人とのかかわりについてまとめられている。手ごろなサイズなのに、ちと高い。

Book 犬の行動と心理

著者:平岩 米吉
販売元:築地書館
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Book 犬の生態

著者:平岩 米吉
販売元:築地書館
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Book 犬と狼

著者:平岩 米吉
販売元:築地書館
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イヌの研究といえば、平岩先生。上記した本はその代表作で、ご自分で飼育されて観察・研究されたことをまとめられている。こうした本はほかにも何冊も書かれているが、もう古い本なのにもかかわらず、いまでも書店でまま見かける。不朽の研究書。

なお、平岩先生自身のことも知りたいひとには、つぎの本が出ている。名をなす研究者とは、みんな、周囲から「どうかしている」と見られる一面をもっている。逆にいえば「どうかしている」ことを完全否定するような社会からは、こういう巨人は現れないのだろうな。

愛犬王 平岩米吉伝
著者 片野 ゆか
販売元     小学館
定価(税込)   ¥ 1,680

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