ニホンオオカミ絵・パグリオネ飛ぶ滝にて
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鎌倉の浜で採集したネコの左大腿骨です。
写真右が外面で、左が内面になります。骨全体の感じからすると、最近のものでしょう。
骨頭部の球形の部分の癒合が甘く、写真の下側になる部分では、大腿骨滑車が遊離しております。つまり、はずれてなくなってしまっています。
これは、骨が完成していない、おとなの体へと成長過程にあるということで、このネコがまだこどもの域であったことを示しています。
この子になにがあったのか、どうして骨が浜に漂着することになったのか、そんなことを考えていると、胸がつまってきます。
でも、こういう骨を無視してしまえば、この子の存在自体がなかったことになってしまう気がします。骨をみて、かつて命あったものたちの存在を認識し、なにがあったかを考えていくのが、私の仕事だと思っています。
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ここ数年、正月に多摩動物園に行くのが恒例となっております。夏頃にも行くので、だいたい年2回の多摩動物園詣でとなるわけですが、いつ行っても、ウォンバットは土にもぐっているので、背中かおしりの一部しか見たことがありませんでした。
ところが、今年は飼育場の中をうろうろしていて、
通路前にある木の台の前に立つと、ウォンバットもそこにやってきて、
よっこらしょ、と木の台にのぼり、
なんとなくご挨拶、そして、
大あくびをしたら、
横を向き、
後を向いて、おしりを見せたと思ったら、
そのまま動かなくなりました。
わずかな時間でしたが、やっと目前で見られた生ウォンバット。
年明け早々、なにかいいことがありそうな幸せな気分になれました。
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『鎌倉の馬の骨』が、やっと刊行となりました。
| 鎌倉の馬の骨 漂着骨を調べる 販売元:セブンアンドワイ セブンアンドワイで詳細を確認する |
どうぶつ社刊で、代金が4500円(税別)と、自分でも驚く価格になってしまいましたが、カラー図版ページが多いので、どうしてもこれくらいになるそうです。
鎌倉の浜漂着のウマの骨を、がんばって歯の1点1点まで同定してありますので、興味あるかたは、よろしくお願いいたします。
一般の書店では、ジュンク堂や八重洲ブックセンターのような大型書店で扱ってくれているようです。
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ご要望があるかどうかわかりせんが、ニホンオオカミの根付とされるものについて一言。
根付というのは、現代でいえば、ストラップについているキャラクターやアクセサリーのようなもので、江戸時代などでは、印籠や煙草入れなどを結ぶ紐に、それがほどけないようにストッパーとして着けた自然物や細かい細工物のことです。
そして、幕末から明治にかけては、山の力ある動物にあこがれたためか、クマやニホンオオカミの下顎の先端を切断し、磨いたり孔をあけたりして根付にしたものが多くつくられたようです。
そうしたものが、やがて古物商に流れると、その過程のとこかで、「クマよりもオオカミのほうが高くつくのでは」とでも考えられたのではないでしょうか。クマの下顎骨の根付もニホンオオカミのものとして売られることになり、扱う古物商もクマとオオカミの区別がつかないまま(ついていても黙っていることもあるでしょうが)、クマもオオカミも「オオカミの根付」として売られ、間違ったまま伝わってしまうことがあるのだと思います。
そこで、クマのもとオオカミを含むイヌ科のものとの簡単な区別の仕方を、ちょっとここで紹介しておきたいと思います。
写真は、クマの下顎骨を加工した根付です。下顎を上からみた内面部で、左側が頭の先になり、顎の先だけを切断したものとなります。全体に研磨され、犬歯(牙)も大きく削られていて、左右の犬歯間には、紐を通すための孔があけられています。
歯は犬歯しかなく、あとは歯がはまっていた穴(歯槽)だけとなっていますが、ここで注意すべきなのは、犬歯のすぐ後にある第一前臼歯の歯槽の位置です。写真の資料では、犬歯の後に、第一と第二前臼歯ふたつの歯槽がのこっていますが、第一前臼歯の歯槽は犬歯とほとんど接する位置にあるのがわかります。実は、これがイヌ科の下顎骨とクマの下顎骨をみわけるポイントになるのです。
イヌ科の第一前臼歯と犬歯の間には、はっきりとした隙間があきます。これに対して、ツキノワグマでもヒグマでも、第一前臼歯と犬歯は密着してはえているのです。
よって、写真の根付も、クマのものだと判断できるわけです。
でも、オオカミのものだからよくて、クマのものだとがっかり、などということはありません。
どちらも古来より山の神ですし、こうした根付も、どちらにしても貴重な歴史資料・民俗資料であるわけです。出所が明確であればいうことはないのですが、動物と人間の関わりを調べているものにとっては、大事な標本であります。
もし、こうしたものを所有しておられるかたがいて、それがオオカミのものかクマのものか迷っていたとしたら、以上の点を参考にしていただければと思います。
以上、今回はちょっとまじめに書きました。
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ここ数年がかりでまとめていた、鎌倉の漂着動物骨のうち、ウマの骨についての本が、「どうぶつ社」さんのご協力を得て、やっと出版にむけて動きだしました。
タイトルは『鎌倉の馬の骨 ――漂着動物骨を調べる――』となる予定で、採集したウマの骨を紹介し、ウシの骨と比較したウマの骨の特徴・見分け方を述べ、各地の遺跡から出土したウマの骨と計測値的比較をし、これらの骨の由来を探ろうとするものです。
目下、編集作業にはいったところで、順調にいけば、年内には刊行できる予定であります。
「こんな本だして、だれが買ってくれるんだろう」という不安はありますが、ともかく、ずっと抱えこんでいた企画のひとつが、やっとひとつ形になるということで、ちょっと肩の荷がおりた気がしております。とはいえ、まだまだ先があるので、これからもがんばらねばと思っておりますが。
実際に刊行される際には、また告知させていただきますが、興味のあるかた、ひとつよろしくお願いいたします。
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※ ※
人間と動物がどうかかわってきたか。
動物考古学という分野では、日夜それを考えつづけています。
そして、遺跡から出土する動物たちのことを、学者だけではなくて、もっと一般のひとたちにも知ってほしい、と思うのです。
それというのも、発掘調査で得られた情報というのは、考古学者だけのものではなく、本来みんなのものだからです。
そして、そのためには、なにをどうしていったらいいのか、いま、あれこれ試行錯誤しているところです。
ここに載せたのも、そうした試みのひとつとして作ってみたものですが、できればこれをつづけて、いずれなんらかの形に発展させられたら、と考えています。
どんなものでしょうか。
遺跡からの出土品としては、お宝的なものは話題にもなり、多くのひとの知るところともなります。でも、動物の骨は、なかなかそういうあつかいはうけない。残念なことです。
動物考古学者としては、出土資料の分析件数をふやし、論文をかいて業績をあげていく、という道もあるでしょう。でも、現在の人間と動物との関係を考えるとき、歴史的にはどうだったかを把握しておくことも大事なことです。
そのために、いろいろと調べ、みなさんにも考えてもらうための情報を提供する。そうしたことに努めるのも、この世界に足をつっこんでしまったもののお役目でしょう。
ただ、自分でも、よわってしまう点があります。
それは、考古学は人間科学に属する学問であり、動物考古学者も当然人間側にたった視点でものをみるわけなのですが、わたしはどうしても、動物側にたってしまうことです。
ひとが動物をどうあつかってきたかではなく、動物がひとにどんなあつかわれかたをしてきたのか、というように。
そんなことだから、わたしは学問の世界からはみだしてしまったのかもしれません。学問という場が、息苦しくてしょうがなくなってしまうのです。どうにか自分をおさえなくてはといっても、そうなってしまうのだから、これはどうしようもありません。
でも、学問というのは、その成果を未来へとつなげていくもの。だから、今後も、わたしはわたしなりに、これからひとと動物はどうつきあっていけばいいのか、それを考えつづけていきたいと思っております。
偏らない視点を保ちつつ。
はるか縄文のむかしから、ほんの昨日までの過去、そして現在をみつめながら。
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トラといっても、愛猫トラではなく、ほんとのトラです。
事情があって、突然、書庫にしていた大型の物置(ちょっとした小部屋ぐらいの広さがあります)が使えなくなりそうで、先週から、その倉庫につめこんであった本などを室内に運びこんでおります。ただ、仕事部屋はすでに本であふれているし、別室もこのことで本で埋まってしまって、もう一歩もなかにはいれなくなってしまいました。
居間はもちろん、玄関にも、洗面所にも、台所まわりにも本が積み上げられ、一時は寝る場所も仕事でつかっている骨の資料・標本に占められ、かろうじてのこる隙間に、ネコのトラといっしょに寝る始末となってしまいました。
これではとても生活も仕事もできないので、多くの集めてきた本や、マンガ・絵を描くための資料・写真なども、大幅に整理・処分せざるを得なくなりました。どれも長年大事にしていたものですが、もう泣く泣くの一大決意です。
とはいえ、資料用にせっせと撮って山とある動物写真のなかには、そのまま処分するには後ろ髪がひかれるものもあります。だれがなんといおうと、自分としてはいつかなんらかの形で使おうと思ってたものなので、使わないままゴミにしてしまうことは、生きてきた道筋をも捨てるようで、ちょっと辛い。そこで、いま、そのなかからも、のこすものを選びに選んでいる日々です。
とりあえず、昔撮ったこんなトラの写真を眺めながら、整理を進めていきます。BGMは、トラの歌ではなく、谷村新司さんの「天狼」ですが。
というわけで、ここのところ意気消沈気味だったのですが、我が家のネコのトラにも元気をもらいつつ、いまのなんだかゴチャゴチャになってしまった状態をきっかけにして、今後なんとかいい方向に打開してやろうと思っております。
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上野動物園が変わったとは知りませんでした。
いまになってひとにきいたもので、行ってみたところ、
ライオン、トラ、ゴリラ舎が広くなり、クマ類の展示も新しくなっておりました。
たしかに、ガラスごしとはいえ、トラとこういう出会いができるようになったのは、穴を掘りたくなるほど嬉しいことです。
むかし(もう大人でしてが)、近所にサルが出たと聞いたとき、瞬間的に嬉しそうな顔をしたのでしょう、家族から即座に
「サルと友達になるな!」
と釘をさされてしまい、
「なれるものなら、なりたいわい」
と思ったことがあります。
理由はなんであれ、サルでもトラでも、向こうから寄ってきてくれると幸せを感じます。
世間では、動物園不要論もありますが、動物園の役割は展示だけではなく、裏では保護、愛護、稀少動物の繁殖なども行われているわけで、動物舎の改築といったことからも、人間の動物に対する涙ぐましい努力をもっと知るべきかな、と思います。
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以前、鎌倉漂着の馬歯について、それが近世以前の日本在来馬か近代以降の大型化したウマのものか判断するには、まずの計測値を…、などということを記しました。
それはそのとおりなのですが、各遺跡出土の馬歯の計測値や現代サラブレッドの歯のサイズを比較してみると、ひとつひとつの歯の大きさは、案外近似するもので、これのみで判断するのは困難かと思われます。
臼歯列長といった、何本もの歯を並べた長さなどの計測値も重要になりますし、また、ひとつひとつの歯にしても、歯冠の大きさなどは年齢、磨り減りかたにもよるので、総合的な判断が必要になるでしょう。
念のため、追記しておきます。
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夕方、東京都日野市の梅林わきを通っていたら、突然なにかが林の奥からとびだしてきて、わたしのすぐ横を走りぬけました。
「ネコより大きい。タヌキか」
と思った瞬間、それは林わきの用水路に突っ込みました。のぞくと、浅い水の中でうろうろしている様子。なんと、タヌキではなく、アライグマでした。
アライグマは、排水溝をみつけると、その中にとびこんで姿を消しましたが、わたしはしばらく動けませんでした。
住宅地でも、タヌキはこれまでも何度かみているのでびっくりしません。ハクビシンをみたときは、ちょっと驚きました。今度はアライグマ。
どこかでは、飼育されていたものが逃げだして野性化しているようですが、ここらでもそうなのか。それとも逃げだしてきたばかりだったのか。
いずれにしても、自分が動物園以外でこうした動物を見るとは思っていませんでした。
ただひたすら、あの子の今後が心配です。
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鎌倉の海浜でウマの歯とともに、数は少ないながらウシの歯も拾えます。ときにウシの歯とウマの歯が混同される場合があるようですが、両者の形態には明確な相違がありますので、注意してみれば、見分けはつくでしょう。
写真は由比ヶ浜採集のウシ左側上顎第二後臼歯と思われる資料です(歯冠長28.8mm)。上が外面(前庭面)、下が同じものの咬合面で、写真サイズは不同です。
なお、鎌倉の浜で拾えるウシの骨は、椎骨では機械的に半截されていたりして(これは解体の際の背割りによるものではないでしょうか)、他の骨でもまだ骨膜が残っていたりするものが多く、比較的最近のものが主体となるのかもしれません。たまに古い感じのするものもありますが。
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『縄文の動物考古学』について
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縄文の動物考古学―西日本の低湿地遺跡からみえてきた生活像 著者:内山 純蔵 |
考古資料のうち、土器や石器だけではなく、動物遺体をはじめとする自然遺物の分析・調査も重要であり、そうした面からの研究も進めていこうとするニューアーケオロジーという概念が提唱されたのは、1970年代のことだった。
ところが、いまだに発掘調査段階で動物遺体資料は捨てられたり(とくに江戸遺跡)、目だった大きなものしかサンプリングしないとか、といった事態は普通に行われており、予算がないからと、分析対象にすることもおそろしく少ない。こんなことは、土器や石器ではありえなかいことである。
こうしたことが続いているのは、動物遺体を専門とする人間(つまり、わたしのような)が、その重要性をちゃんと説いてこなかったからである、といわれたこともある。そこで、なんとかしなくては、と思いつつあるところ、『縄文の動物考古学』と、ストレートなタイトルの本が出た。これは、久しぶりに刊行された「動物考古学」の概説書に違いない。そう思って、喜んでさっそく購入し、読んでみた。
結果、期待とは違っていた。この本は、福井県鳥浜貝塚と滋賀県の2遺跡から出土した縄文期の動物遺体資料を使った、長大な研究論文といったもので、一般向けの概説書とはいえないものであった。著者も、とくに動物遺体の専門家でもないのかな。
論文の内容に関しては、順序だてて細かくさまざまな分析を行っているようで、きめ細かさを感じるが、結論として、シカ猟・イノシシ猟を○月、○○月と、現在の12月で記述しているところが気になる。
動物というものは、1月だから、2月だから、といった形で生活しているわけではなく、気候など環境条件によって生態状況も変化するものであろう。となると、狩猟時期を推定するには、まず縄文期(それも、前期や後期ではまったく違う。縄文海進、海退というのがあって、前期などは気候温暖期にあって、関東でいえば、東京湾などは、湾奥は現在の埼玉県にまで達していた)の気候、それによる地域的植物相・動物相なども考慮にいれ、その環境下では、研究対象とする動物がどういう生態を示すのかを調べなければならないだろう。
現代でも、暖冬、猛暑、温暖化などで、動物が通常とは異なる動きをみせて、ニュースのネタになったりしている。環境条件というものは、決して無視できるものではないのだ。本書は、そこのところの詰めが甘いようだ。せっかく細かく検討しているのだから、こうした面も大事にしてほしかった。
とはいえ、わたしもかつて、気候温暖化期にあった縄文早期の、スズキ(某貝塚出土の主体魚種)の漁労時期を推定しようとして、まず現在の気候条件でわかっているスズキの年間行動を、縄文早期の推定年平均気温にあわせて修正しようとしたら、一年中漁労可能ということになり、漁期の推定などできなかったことがある。また、こうしたことも、結局は机上論で、実際気温・海水温が高いときの動物の行動など、実際にそういう条件化での観察がなされないかぎり、なにが正しいのかわかりゃしないであろう。
よって、せっかくの本書も、結論的には、参考でとまってしまうかも。それでも、こうした研究方法を提示していただけたということで、考古資料としての動物遺体分析の重要性も、世に伝えられたのではないか、とも思う。本書の意義は、「あとがき」に書かれている。わたしの抱いているいらだちも、著者の思考と相通じるものだろう。考古学という世界には、もっと、こういう研究者が必要なのだと考える。
ただ、統計学的用語・方法などは、説明もないため、一般にはよくわからないだろう。一般書籍として刊行する以上、そうした面での配慮も欲しいところではある。
刺激をいただいた。いつか、自分もちゃんと一書を書かねばと思うしだいである。
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動物学関係
イヌ
人間とイヌとの関わりについて書かれた本を何冊か紹介したいと思う。
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人イヌにあう 著者:コンラート・ローレンツ |
これは、基本中の基本となる本。のはずで、ずいぶん前に買って読んだと思うのだが、書棚のイヌ本のかたまりの中に見当たらない。書庫となっている物置(いまや中に入るのも一苦労)にあるのかもしれないが、内容を確認できなかった。でも、基本の本であることに変わりはない。
| イヌ―どのようにして人間の友になったか | |
| 著者 | J.C. マクローリン |
| 販売元 | 岩波書店 |
| 定価(税込) | ¥ 968 |
これはイヌの進化から書きおこし、オオカミとイヌとの相違点(骨格を含む)や、最初に家畜化されたイヌをどう追求するかといった問題についての所見を述べている。専門的な面では、やや強引なところもあるようだが、一説として聞いておく必要はあるかも。
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著者の専門は、日本中世史のようだ。縄文時代のイヌのことから書かれているが、記紀神話などの文献に書かれた事項や中世におけるイヌと人との関わり、江戸時代でのこと、さらには「犬の霊力・呪力・超能力」といったことにまで触れられていて、楽しい本である。
| 犬から探る古代日本人の謎―ヒトとともに生きてきたイヌの遺伝子が日本人のルーツを語る | |
| 著者 | 田名部 雄一 |
| 販売元 | PHP研究所 |
| 定価(税込) | ¥ 714 |
これは、イヌの血液から遺伝子を抽出し、その組成分析から現在の日本のイヌが世界のどの地域にいるイヌに近いかを割り出し、日本犬の起源を探るとともに、そのイヌとともに生活していたはずの原日本人のルーツをも追及しようとするもの。画期的な研究内容であるが、その結論が学問的に認められるかどうかは、まだ他の面からの検証が必要であるといったところのようだ。
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イヌの力―愛犬の能力を見直す (平凡社新書) 著者:今泉 忠明 |
これは、単にイヌの能力について書かれた本ではなく、化石人類とイヌとの出会いから、イヌの祖先はオオカミなのかという疑問への検証、日本人とイヌとの関わりなど、歴史的な面に多くのページを割いている。
日本人とイヌとの最初の出会いというものは、まだはっきりとはわからない。縄文時代の遺跡から、イヌの埋葬遺体が出土していることから、この頃にはもう人とイヌとの関係は密接なものになっていただろうと推定されるのみだ。イヌ自体の起源に関しても諸説あり、有力説はあっても、確定的ではないようだ。こんなにも親しいイヌという動物について、われわれが知っていることは、まだまだ少ないようである。
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鎌倉由比ヶ浜・材木座海岸採集のイヌ・ネコの下顎骨を、ホームページのほうにまとめました。
興味のあるかたは、どうぞそちらをご覧ください。
ネコの骨はいずれも最近のもののようですが、イヌに関しては、最近のものと、古いものなのではと思われるものがあるようにみえます。所属時期を中世にもつものもあるのかもしれませんが、具体的・確定的なことはわかりません。
いずれ、他の骨部位についても、なんらかの形でまとめたいと考えています。
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動物学関係
犬学
学術分野で、「犬学」というのが確立しているのかどうか、よくわからない。でも、遺跡から出土するイヌのことを調べるにも、現在生きているイヌたちのことを知るにも、この手の本はしょっちゅぅ見るため、もう自分の本はぼろぼろになってしまった。そんななかから、主なものを紹介したい。
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イラストでみる犬学 著者:林 良博 |
きれいなカラーイラストで、イヌの起源・進化・分類・遺伝、体の構造と機能、行動学、健康・病気、その他動物に関する法律など、さまざまなことが詳しく記載されているありがたい本。常にそばに置いておきたいもの。
| イヌ―このふしぎな動物 (1983年) | |
| 著者 | 今泉 吉典 |
| 販売元 | 教育社 |
これは絵本的に書かれている部分もあり、こどもにも読めるように記述されている。「こどもでも」といってもバカにするなかれ。内容はかなり専門的部分にまで踏み込んでいる。もう古い本になってしまったので、もうなかなか書店には置いてないだろう。
| 図説犬学大辞典―犬の形態と用語解説 | |
| 著者 | ハロルド R.スパイラー,メアリー・デビッドソン,ペギー・デビッドソン,大野 淳一 |
| 販売元 | 誠文堂新光社 |
| 定価(税込) | ¥ 4,410 |
A to Z で、イヌのすべてを項目ごとに解説してくれている。専門的だが参考にさせてもらうことが多く、わたしの本はもうぼろぼろになってしまった。
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イヌの動物学 著者:猪熊 寿 |
これは比較的最近出たアニマル・サイエンス・シリーズの一冊で、手ごろなサイズでイヌの社会・行動・人とのかかわりについてまとめられている。手ごろなサイズなのに、ちと高い。
| 犬の行動と心理 著者:平岩 米吉 |
| 犬の生態 著者:平岩 米吉 |
| 犬と狼 著者:平岩 米吉 |
イヌの研究といえば、平岩先生。上記した本はその代表作で、ご自分で飼育されて観察・研究されたことをまとめられている。こうした本はほかにも何冊も書かれているが、もう古い本なのにもかかわらず、いまでも書店でまま見かける。不朽の研究書。
なお、平岩先生自身のことも知りたいひとには、つぎの本が出ている。名をなす研究者とは、みんな、周囲から「どうかしている」と見られる一面をもっている。逆にいえば「どうかしている」ことを完全否定するような社会からは、こういう巨人は現れないのだろうな。
| 愛犬王 平岩米吉伝 | |
| 著者 | 片野 ゆか |
| 販売元 | 小学館 |
| 定価(税込) | ¥ 1,680 |
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動物考古学関係
骨からその動物の種を同定するには、実物標本が手元にあるのが一番いい。しかし、魚類以外の動物の骨格標本をそろえるのは、個人レベルではなかなか難しい。そこで、標本のないものは、獣医解剖学などの図版などをみて、遺跡出土資料の骨と比較することになる。とはいえ、これも簡単にはいかない。標本があればものの数分で判明することが、図版相手だと、そしてとくに遺跡出土資料が破片だったりすると(ほとんどがそうである)何時間も迷ってうなることになる。
今回はそうした図版資料として、よく利用させていただいている本を紹介したい。
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神経系統や筋肉など、骨格部分以外の記述が多いが、ウマの基本骨格を見るにはいい。ただ、脊椎骨の図版にもう少し詳しいのが欲しかった。
| 牛の解剖アトラス 著者:Klaus‐Dieter Budras,Robert E.Habel |
上記の本のウシ版。やはり脊椎骨の個別詳細図があれば。
| 新イヌとネコの臨床解剖カラーアトラス 販売元:チクサン出版社 |
これは写真で構成されたもの。イヌとネコは骨格標本も所蔵してあるのだが、大事に保管してあるため、ちょっと調べるには、だいたいこの本を使っている。
『動物考古学』
これは学術専門誌。動物考古学研究会の会誌である。専門的研究論文のほか、2002年の19号より「哺乳類動物骨格図集」を連載している。
19号にイノシシ、シカ、イヌ、タヌキ、キツネ、アナグマ、カワウソ、ノウサギ、ムササビ、ニホンザルの各骨
20号にトド、アシカ、イルカ類の各骨および、19号掲載種の追加
1号とんで22号にアザラシ類、リクガメ、ウミガメ類各骨
23号にウシ、ウマ各骨
24号(現在最新号)にクマ類、ネコ、テン各骨
というラインナップになっている。ただ、これは図版が並ぶのみで、各骨についての詳しい記述などはない。
まとまった本としては、こうしたものだが、骨を見分けるためには、来る日も来る日も、実際の骨を飽くことなく見続けることだろう。手にした資料がある図版とそっくりでも、見分けるポイントをはずしていると大間違いになることが多い。このポイントをはずさないようにするには、実物の骨を見続けるしかないと思う。
ちなみに、骨格標本欲しさに生きている動物に手をかけるようなことは、学問のためであっても認め難い。わが師もそのまた師(直良信夫先生)も骨格標本は学術資料として収集されていたが、なにかの縁で生きた動物を入手した場合は、生かせる限りは生かすとがんばって飼育されていたようだ。飼育技術があると、対象動物は長生きし、情もうつり、こうなるともう家族である。
学問には、愛が必要である。
(17)へつづく
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動物学関係
サメ本のつづき
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かつて日本テレビ系列で、日曜日の7時30分から『知られざる世界』というドキュメンタリー番組をやっていた。ドキュメンタリー好きには、いまでも思い出に残る番組なのではないだろうか。この番組で、サメに関するものとしては、クストー同様に、よくユージニ・クラーク博士が登場していた。サメの研究をしている日本人の血が流れている女性海洋生物学者で、いつか、自分もこういう仕事をしたいものとあこがれの存在だった。本書は博士が専門のひとつ、サメについて、その研究活動についてを一般向けに書かれたもの。もうずいぶん前の本となってしまったが、サメ好きなら基本の一冊であろう。なお、博士の半生をつづったものとしては、自著、『銛を打つ淑女』と
| サメ博士ジニーの冒険―魚類学者ユージニ・クラーク 著者:エレン・R. バッツ,ジョイス R. シュワルツ |
がある。前著はさすがに絶版だろうか。
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これはもろに映画『ジョーズ』のヒットにのって出版された本。ジョーズを意識した日本語タイトルや挿絵を使っているが、内容はサメによる人間への攻撃について、けっこうまじめに書かれている。
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これはサメの生物学的情報も含まれているが、文化史的面の記述が多い。
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これは、児童向けにいろいろなサメのエピソードを集めたもの。
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サメの世界 《第2版》 著者:文・仲谷 一宏 /写真・中村 庸夫 |
これも、どちらかというと児童向けといった感じで、掲載種数も少ないが、歯(顎)の写真ものっていて、おとながちょっと見るには手ごろかも。
考古学関係
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縄文再発見―日本海文化の原像 著者:藤田 富士夫 |
生物学から一転、遺跡出土のサメについての記載がある本。日本海沿岸域の縄文文化について書かれたものだが、ヒスイ文化とともにサメ文化という名称を用いて、この地域のサメ漁や交易品としての歯についての一章が設けられている。
考古学において、サメ限定で書かれたものとしては、「遺跡出土のサメの歯について」『考古学雑誌』第70巻第1号(1984年 日本考古学会発行)ぐらいであろうか。タイトルどおり各地の遺跡から出土したサメの歯をまとめたものだが、もちろん現在はさらに出土数は増えている。
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動物学関係
こどもの頃、『わんぱくフリッパー』というイルカを主人公にしたアメリカのテレビ番組をみていて、イルカはもちろん、ちょっとひねくれものの私は、敵役でよくフリッパーにやっつけられていたサメにもとりつかれた。流線型の美しい体、かわいくさえ見える丸い目。興味を覚えたわたしは、さっそくサメに関する本を読んでみたいと思った。でも当時、そんな本はみつからなかった。
そして高校生のときだったか、スピルバーグ監督の『ジョーズ』が大ヒットしたため、ようやく何冊かのサメ本が書店にならんだ。
その頃からいまに至るまで、サメの本というと、それだけで集めてきてしまったが、最近は少々多すぎるようになってきて、内容が新鮮でないと購入するまでには至らなくなった。
今回と次回は、わたしの本棚に並んでいる(というより、もう詰め込み状態だが)サメの本のうち、なつかしいものやら、最近刊行のものやらを紹介してみたい。
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これは最初に買ったサメに関する本で、テレビ番組で海洋冒険シリーズをやっていた有名なジャック=イブ・クストーの著作で、全7巻あるうちの2巻目、クストーのチームが世界の海でであったサメとのエピソードが綴られている。サメに関する情報はもう古くなってしまったが、読みながらわくわくした気分は、いまでも忘れられない。
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これも古い本になってしまった。入手するには、古書店で探すしかないかも。サメ各種を種ごとに生態や形態を述べ、ほかにも人類との関係などといったことが書かれている。現在では当時よりもサメの種数もふえ、物足りない感じになってしまったが、これを入手したときは常に枕元に置いておくほど気に入っていた。
| 鮫 著者:矢野 憲一 |
これは、文化史の面からサメの情報を集めた本。サメの伝説、民俗、さまざまな利用法、漁法など。古代のサメと人間との関係を考えるうえでは貴重な一冊である。
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まだ最近の本だと思っていたら、そこそこ発売から年数がたってしまった。サメに関する A to Z といった感じで、基本的な情報が網羅されている。
| サメの自然史 著者:谷内 透 |
これもやや年数がたってしまったが、生物、水産資源としての情報が網羅されている。記述は専門的。ちょいと高いが、それだけの内容は満たされていると思う。
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サメガイドブック―世界のサメ・エイ図鑑 著者:アンドレア フェッラーリ,アントネッラ フェッラーリ,谷内 透 |
まだ新しいといえる本。カラー写真満載の図鑑で、ひとむかし、ふたむかし前より種数が増えたサメ類を確認するのに使わせてもらっている。
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サメのおちんちんはふたつ―ふしぎなサメの世界 著者:仲谷 一宏 |
新しいサメ本のうちの一冊。軽そうな題名だが、中身はちゃんとサメの専門家が一般のひと向けにわかりやすくサメという生物を解説したもの。字が青いこともあって、疲れず読みやすい本です。ただ、写真も青く、ときに写っているものが不明確なものもある。
(12)へつづく
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先日、調べごとがあって横浜の根岸にある「馬の博物館」に伺った際、なにくれと便宜をはからってくださった学芸員のかたから、「由比ヶ浜でウマの歯を拾ったのですが、いつごろのものですか」という問い合わせをいただくのだけど、という話をおききしました。
そこで、わたしの立場からひとこと。
日本のウマは江戸時代までは、在来馬という中・小型馬でありまして、知っているひとは知っていることですが、時代劇で暴れん坊将軍がサラブレッドに乗っているようなことはあり得ませんでした。
鎌倉の由比ヶ浜や材木座海岸はよく馬歯が拾えるところで、わたしも集めてサイズを調べてみましたが、いずれもが遺跡から出土するような在来馬に等しい大きさでした。付近にウマの遺体が出土する中世遺跡が広がっていることもあり、こうしたことからすると、ここで拾える馬歯も、中世遺跡から流出した可能性の高いものではないかと思われます。
ただ、漂着物では考古資料にはなり得ず、時代も特定することはできません。サイズが在来馬に相当するなら、せいぜい近世(江戸)以前と考えておくべきでしょう。
また、この海岸からは数は少ないながら、大型のウマの骨も拾えたりするので、そうしたものは近代以降ウマを大型化させていった後のもの、あるいは現代のサラブレッドのような大型馬のものと考えられるため、ここで拾えるすべてのウマが近世以前のものとも断定できません。まずは、拾った歯がウマの歯列のうちのどの歯かを同定し、サイズを調べてみることが肝要かと思います。
さらに、由比ヶ浜、材木座で拾えるものは黒ずんでいて古くみえますが、鎌倉の水質は鉄分が多いといわれており、黒ずみもそうしたものの影響を受けているのではないかと思います。最近のものと思われる鳥骨なども、かなり黒くなっていたりします。もっとも、こうしたものは乾燥すると黒ずみが消えたりしますが。
以上、ざっとですが、鎌倉採集の馬歯についての情報を求めているかたのために、ここに簡単に述べさせてもらいました。
実は、現在、近々ウマの歯や骨についての本を出そうとあくせく原稿を作成しているところで、そのなかで馬歯のサイズについてもふれるつもりでいるので、刊行なったあかつきには、参考にしていただけたらと思います。
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